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猫のゆりかご (ハヤカワ文庫 SF 353)猫のゆりかご (ハヤカワ文庫 SF 353)
(1979/07)
カート・ヴォネガット・ジュニア

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「本書には真実はいっさいない。」-略-「わたしをジョーナと呼んでいただこう。」


 「ジェイルバード」で経済を八つ裂きにして、「スローターハウス5」で戦争を火あぶりにして、「チャンピョンたちの朝食」では芸術をたいらげた。そして「猫のゆりかご」では、科学を否定して、宗教をも否定した。ニヒリスティックな宗教の聖典は、「本書には真実はいっさいない」と、読者が物語にのめりこむことを拒み、「わたしをジョーナと呼んでいただこう」と、虚構的な物語を前進させる。

 ヴォネガットは、読者をつかまず、はなさず、物語を進めていく。高橋源一郎や村上春樹などのポップな文体は、今ではありふれたものとなっているが、ヴォネガットのそれには、下品な気品さがある。洗練されたロジックで、子供みたいに悪態をつき、主人公はたえず愚痴をこぼしながら、そして自己実現を完遂する。はたから見ているとうらやましいが、当の本人は不幸で仕方がない。つまり、普通そのものの生活だ。

 登場人物はきまって悲観的で、自己否定を繰り返しているが、ヴォネガットの作品がSFと括られるように、ストーリーは進化みたいに、前進を義務づけられている。「悲観するには、あまりに楽観的」とは、この本の言葉。

 「わたしがニヒリストになるのを望んでいない、何者か、または何かが存在するのだ。」
全てを否定した者が、ニヒリストになることさえ拒んだとき、キャッチーな絶望ではなく、自然と笑みがこぼれる。



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